本の感想日記

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【読書日記】御手洗潔シリーズ『占星術殺人事件』part2

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文次郎の手記

この手記の内容を大きく二つに分けると、

・罪の告白

・独自調査

に分かれています。

 

罪の告白では、文次郎(飯田の父)がどのように占星術殺人事件に関わっていたかが書かれていました。

まず、おさらいすると、占星術殺人事件

⑴梅沢平吉の密室殺人

⑵平吉の長女・金本一枝の強盗殺人

⑶平吉の屋敷に住む六人の娘の殺人と死体遺棄

の三つの事件からなります。この事件の名を日本に知らしめた要因は、梅沢平吉が残した小説(遺言状)と⑶の事件です。生前、平吉は占星術に従い選んだ六人の処女の頭部・胸部・腹部・腰部・大腿部・下足部を組み合わせることで理想の女性を作り出そうとしていました。平吉が亡くなってから、小説に書かれた通りに身体の一部をなくした六人の娘の遺体が全国各地から見つかりました。しかし、日本を震撼させたこの事件は犯人が見つからず四十年以上も未解決なままです。

文次郎が関わった事件は⑵の事件と⑶の死体遺棄です。

正確にいうと、文次郎は⑵の事件には関わっていません。ある夜、文次郎は駅の前でうずくまっていた女性を助け家まで送り届けます。そして女性の家で一夜限りの関係を結び、いつもより二時間遅れで帰宅しました。そのときは大したことにならないだろうと思っていた文次郎ですが、翌々日に一枝の遺体が発見されたことで状況が一転します。文次郎が女性を送り届けた家こそ金本一枝の家でした。加えて、遺体発見後の検分で一枝の死亡推定時刻は文次郎と女性が一緒にいた時間帯と全く同じだったのです。また、一枝の遺体から発見された犯人のものと思われる体液は文次郎と同じO型であり、状況証拠から見れば文次郎が犯人であることを示していました。

恐怖を抱き数日を過ごした文次郎の元に手紙が届きます。手紙には、文次郎が金本一枝を殺害した証拠を公表されたくなければ、六遺体を同封した地図に示す場所にそれぞれ遺棄しろという主旨の内容が書かれていました。文次郎は自分は殺した訳ではないと思いながらも、弁明することがとても困難であることに気付いていました。また、仮に犯人でないことが証明できたとしても、事実だけで警察官で妻子持ちである文次郎は路頭に迷うことになります。

そのため、文次郎は手紙に従います。これが⑶の事件と文次郎の関わりです。病気の妻の看病と偽って休暇を取り、日本各地の指定場所に六体の遺体を埋めていきます。色々な意味でギリギリでしたが、文次郎は手紙の指示を完遂します。そして、その後の警察官人生を怯えながら過ごすことになるのでした。

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その選択は!もっとヤバイことに加担してる‼︎

独自調査は、警察官を退職した文次郎が事件の解明のために費やしたことが書かれています。

生き残った梅沢家の面々、生前平吉が出入りしていた店や関係者の元を訪れ、話を聞いていきます。

生き残った梅沢家の(関係者の)人間として文次郎が調べたのは、

・平吉の弟の妻である文子

・平吉の前妻の多恵

・平吉の後妻の元夫である村上諭

の三人です。事件当時文子と多恵は警察から嫌疑をかけられ捜査を受けていたため、反対に文次郎は嫌疑を免れた村上諭に疑いを持ちます。しかし、実際に話を聞くと村上諭には嫌疑を免れただけのアリバイがあり、文次郎は警察が白だと判断した者は調査の対象から外すべきだと教訓を得ました。

平吉が通った一杯飲み屋「柿の木」の関係者として調べたのは、

・おかみの里子

・客でマネキン工房の経営者である緒方厳三

・緒方に使われていた安川民雄

・客で画家の石橋敏信

の四人です。平吉は「柿の木」には月一でしか通っていなかったため、そもそもおかみの里子は関係が薄かったです。店の客の中で、平吉が工房やアトリエに押しかけた緒方厳三と石橋敏信にはアリバイも動機もありませんでした。緒方と行動を共にしていた安川民雄にはアリバイがある事件もあればない事件もあり、文次郎は安川を微妙に疑っているようでした。

平吉が通った画廊「メディシス」の関係者として調べたのは、

・女主人であり平吉の愛人であった冨田安江

・客で彫刻家の徳田基成

・客で画家の安部豪三

・客で画家の山田靖

の四人です。富田安江は事件当時に嫌疑がかかったため捜査は十分にされています。文次郎が最も怪しいと睨んでいた徳田基成は文次郎が尋ねる前に亡くなっていました。彼は動機がない上に妻の証言とはいえアリバイが確認されています。安部豪三も既に亡くなっています。徳田の後輩という関係で平吉と仲良くなりましたが、平吉と年が離れていたため店以外での交際があるとは思えず当時住んでいた場所も遠かったです。山田靖は温和の性格で、平吉の友人というよりも気難しい平吉とも言葉を交わせるただけの相手です。平吉は彼のアトリエを訪ねたことがあるものの山田の妻が目当てでした。そして、山田夫婦には動機もアリバイもありません。

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まだ心象による犯人予想(推理じゃない……)