本の感想日記

読書の感想などを書く日記代わりのブログです。

羨ましい!けど、共感も出来る青春群像劇『吉野北高校図書委員会』

吉野北高校図書委員会』は、山本渚による、図書委員会を舞台とした高校生たちの群青劇を描いた恋愛小説です。

 

普通の高校生達の青春が読みたい‼︎という人にはオススメです。反対に、スーパーヒーローが出てくるような話が読みたい恋愛が成熟する話が読みたいという人は楽しめないかも知れません。

 

世の中には少年少女たちの恋愛事情を描く作品は沢山あります。様々なバリエーションに富んだ作品が並ぶ中で、この小説の特徴は「登場人物の平凡さ」だと私は考えています。現実的な世界を舞台としていることに加え、主人公たちのスキルも一般的。作品の中で、勇者になったり、貴族になったり、作家や漫画家として活躍したりーーということは、一切ありません。題名にある通り、吉野北高校という学校で図書委員会に所属している高校生たちが、周囲の変化や自分の感情に振り回される御話です。

 

あらすじ

物語の舞台となっているのは徳島県にある真面目な校風を持つ進学校です。図書委員会に所属している高校2年の川本かずらは、周囲から「ゴールデンコンビ」と命名される程仲の良かった男友達の武市大地に彼女が出来たことで、大地への微妙な想いに気付きます。しかし、大地の彼女は、かずらにとっても大切な後輩。そして、かずらの中にある大地への感情は、恋愛感情とは言えません。何とも言えない淋しさを抱え、自分の感情の落とし所を見つけられないままのかずら。そんなかずらに想いを寄せる同じ図書委員の藤枝高弘。高弘は高校デビューに失敗し、一年生の頃は留年ギリギリの不登校生でしたが、かずらに出会ったことがきっかけで不登校を脱した少年です。かずらのことをよく見ているからこそ、かずらの変化や悩みに気付いた高弘。彼はかずらは大地のことが好きなのでは、と疑念を抱いています。

そんな中、大地が「彼女と別れるかも」と言い出してーー。

 

 

感想

高校生たちの青春に悶える小説です。

「はぁ〜、良いなぁ…可愛いなぁ…」としみじみ噛み締めて読み進めていました。

名前がある登場人物は皆良い子なので、基本的に穏やかな精神でいれます。大きなイベントを登場人物たちがどう乗り越えるのかを楽しむというよりは、懐かしさと共に微かな羨望を感じつつ楽しむ物語です。

私は先に、この小説を恋愛小説と述べましたが、個人的には青春小説だと思っています。恋愛を主軸に置いている青春小説。まぁ、それを恋愛小説だと言うのだと言われれば「そうですね」としか言いようがないのですが。

ただ、結末のネタバレになるのですが、恋愛小説でのハッピーエンドを「主人公が誰かと結ばれる」ことだと考えている人の場合、この小説を十分に楽しめないということに注意して欲しいです。そも、川本かずら自体が「いつか別れることになる位なら、恋人はいらない」というような考え方をしていた少女なのです。少なくとも1巻の中では、かずらも高弘も誰とも結ばれることはありません。

最後に、この本の中には2つのエピソードが収録されており、1つ目は題名と同じ名のメインエピソード「吉野北高校図書委員会」、2つ目は大地の彼女が主人公となった「あおぞら」。主人公と誰かが結ばれる話が好きな人は「あおぞら」は楽しめるかもしれません。1つ目と比較すると短いです。主人公のベクトルが一気に変わって、可愛い要素が高まる御話だと思います。